2021年03月05日 (金) 能楽関連
「能楽師(太鼓方)が案内する横浜能楽堂見学と太鼓ワークショップ」を開催しました。
横浜能楽堂では平成30年度より能楽師が舞台や楽屋を案内して能楽の体験をしていただく催しを実施しています。今年度は狂言方と太鼓方によるご案内で、2月23日(火・祝)に「能楽師(太鼓方)が案内する横浜能楽堂見学と太鼓ワークショップ」を開催しました。講師は、太鼓方金春流の梶谷英樹さんです。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。当日の様子をご紹介します。
まず初めに、本舞台の見所で梶谷さんのデモンストレーションを鑑賞しました。
太鼓の音と掛声のみなのですが、ものすごい迫力にまず圧倒されました。
その後に囃子方の4種の楽器、能舞台と能の歴史についてのお話を聞きました。
囃子方のハヤスという漢字には、「栄やす/映やす」という字があるように、囃す相手を映える/映えるように囃すという意味があるそうです。太鼓は4種の楽器のリーダーで指揮者役、能の後半のメインの場面で演奏します。
横浜能楽堂の本舞台の歴史の中で、旧高松藩松平家にあった染井時代には、梶谷さんの師である22世宗家金春惣右衛門さん、23世國和さんがお住まいになっていたことがあり、梶谷さんのお祖父様、お父様もお稽古に通っていたのだそうです。梶谷さんにとっては、この舞台にはとてもご縁があり親しみを感じる、というお話が印象的でした。
そして、白足袋に履き替えて楽屋に移動し、焙じ室・楽屋・鏡の間を見学しました。
鏡の間では、公演が始まる際の囃子方が楽器の音色の調子を合わせる「お調べ」の座る順番や、幕を左右両方ともに上げる「本幕」で出入りすることは太鼓方はありませんが、たった一曲だけ太鼓方が本幕で戻る重い曲「朝長 殲法」のお話など、囃子方からみた能のお話を聞きました。
続いて、公演時に囃子方が舞台に出る際と同じように幕を左の片方だけ上げる「片幕」にして参加者の皆さんが本舞台へ。
舞台の上で太鼓方から見た舞台の説明を聞きました。例えば、シテが舞台に出てきて止まって謡い出す場所を橋がかりにある一の松にするか、本舞台の常座にするかは事前に打合せをしており、一の松はとても重要な目印となるなど、太鼓方ならではのお話もあり興味深かったです。
また、太鼓方は能の公演では本舞台中央に座ることは無いため、梶谷さんはデモンストレーションではいつもと景色が違い、緊張していました、とのことでした。
後半は舞台から楽屋に移動して太鼓体験です。
太鼓を打つ前に、太鼓の組み立てを見学しました。太鼓は牛の革と欅の木の胴と縦と横の調べ緒、樫の木の台から構成されます。
組み立ては、縦の調べ緒を手繰り寄せて解いて結んで、また手繰り寄せて解いて結んで、を何度も繰り返しきつく締め上げます。かなり締め上げたところで音を確認して、今度は横の調べ緒をきつく締め上げます。なんと力のいる作業なんでしょうか~。本当に太鼓方は道具の準備の段階から既に体力勝負です。一般には薄い革を好む方が多い中、梶谷さんは特に厚い革をきつく締め上げた音がお好きだとのこと。楽器屋さんから厚い革の入荷があると連絡が入るそうです。
いよいよ太鼓を打つ体験の始まりです。
小の撥、中の撥、大の撥の打ち方と掛け声の組み合わせをお稽古します。太鼓の打音と掛声を一定の順序に配列した手組を記した『金春流太鼓粒附』にある「オロシ」、「打込」などをグループで打ち、さらに一人で打ちました。
楽屋でのお稽古体験の後には、一人ずつ舞台に上がり太鼓を打つという緊張の瞬間です。舞台の上では頭が真っ白になりました、という参加者もいらっしゃいました。
アンケートでいただきましたコメントをご紹介します。
・作法や打ち方を学べて良かったし、先生もとてもステキでした。舞台でやれたのも良かったです。
・梶谷先生から直にお話を伺えて、とても分かりやすく、能が身近に感じられました。舞台に上がった時は、気持ちが舞い上がりました。
・新しい発見があり、楽しい時間でした。ありがとうございました。
・こんなに詳しく打ち方を教えていただけると思っていなかったので楽しかったです!舞台上にもあがれて貴重な経験ができました。
マスクを取って集合写真をパチリ。皆さま、緊張のあとの充実したいい表情です。
ご参加いただいた皆さま、コロナ禍での開催でいろいろと運営にご協力いただきありがとうございました。横浜市の文化財に指定されている本舞台を独り占めした気分はいかがでしたでしょうか。非日常の貴重な思い出にしていただけましたらとても嬉しいです。
ではまたのご来館をお待ちしております。
はぜの木