スタッフブログ

2021年01月30日 (土) 日々の出来事

横浜・紅葉ケ丘まいらん連携事業「日本画(板絵)体験と横浜能楽堂見学」を開催しました。

令和3年1月16日(土)に「日本画(板絵)体験と横浜能楽堂見学」を開催しました。講師は日本画家の武田裕子さんにお願いし、横浜市民ギャラリーにもご協力いただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。当日の様子をご紹介します。

 

まずは、これから描く梅の描かれた本舞台の「鏡板」を見学しました。140年余りの歴史ある鏡板です。松とともに梅が描かれているところが特徴です。目に焼き付けたところで、本舞台と同じ図柄の鏡板のある第二舞台に移動して日本画体験を行いました。

 

絵を描く葉書サイズの板は、木目や色合いの異なる杉、米松、樫、樅の4種を用意しました。まずは板選びからです。

 

そして、「鏡板」を見ながら葉書サイズの板に下絵を描きました。一から描いてもよし、武田さんのお手本をなぞってもよしです。

 

下絵ができあがったところで日本画特有の絵具などの説明がありました。
絵具の材料となる天然岩絵具岩石標本を武田さんにお持ちいだたきました。自然界にこんなに様々な色があるのですね。いつまでも眺めていたい美しさです。

 

これらを粉状にしたものが岩絵具です。例えば、「マラカイト」から緑青(りょくしょう)が、「アズライト」から群青(ぐんじょう)の粉ができます。粉の大きさにより細かいものは薄い色に、粗いものは濃い色になるそうです。粒子径により番手表示があり、番手が大きいほど細かいそう。白緑(びゃくろく)は最も細かいそうです。この粒子に膠(にかわ)を混ぜて絵具ができあがります。
膠は動物の骨や皮を細かくして煮詰めた煮凝り状のものを乾燥させたものです。これをヒーターで温めると液体状になり先の粒子に混ぜると絵具のできあがりです。
実際に当日、白緑に膠を混ぜて絵具も作る様子を見ました。

 

白色は、胡粉(ごふん)という板甫牡蠣(いたおがき)の殻の裏側を粉状にしたものです。こちらも膠を混ぜて絵具ができるまでを実演していただきました。混ぜた塊を小皿に何度も叩きつけて練っていきます。これを「百叩き」というそうです。

 

さらに墨を摺って、この日に使用する絵具のできあがりです。日本画の絵具とは、なんと手間ひまかけて作るのでしょうか・・・。驚くばかりです。

 

そして、いよいよ武田さんにお手本を描いていただきました。梅の枝のような植物は根元から枝先へ向かって描いていくそうです。墨が乾く前に白緑を軽く置く「垂らしこみ」という技法により、枝の苔を表現します。梅の花の白色は複数回重ねずに一回で描くと乾いたときにふっくらした花びらになるそうです。プロの筆さばきはとても美しかったです。

 

参加者の皆さんの手元もフォーカスしてみました。皆さん真剣に描いていました。


 

最後の仕上げは絵具を乾燥させてから行うために、その乾燥時間を活用して施設見学に出かけました。普段入ることのできない鏡の間や楽屋を見学し、そして、横浜市の文化財である本舞台の歴史ある鏡板を切戸口から間近に見ていただきました。板絵の仕上げの参考になりましたでしょうか・・・。

 

乾燥した頃に第二舞台に戻り、いよいよ仕上げです。最後は梅の花の真ん中に「しべ」をちょんちょんと金色で描きます。金色の絵具はさすがに金粉を使用すると高価すぎるためにポスターカラーです。これで完成!墨と白緑と胡粉の岩絵具によるシンプルな図柄ですが、異なる板の種類と異なる下絵と異なる筆のタッチにより、皆さん個性的な仕上がりでした。

 

マスクを外して記念撮影、皆さん、達成感に満ちたとてもよい表情です。

 

ご参加いただいた皆さま、緊張がとけない日々が続いておりますが、少しでも心が柔らかくなるような時間をお過ごしいただけましたでしょうか。そして、お手元の板絵を見て横浜能楽堂の鏡板を思い出していただけましたら嬉しいです。またのご来館を心よりお待ちしております。

 

P.S.
2月4日(木)~8日(月)に武田さんの日本画とちりめんドレスのコラボレーションによる、武田裕子×ESKIWA 特別企画展「ハルフルハナノコエ」が開催されます。場所などの詳細情報は武田さんのtwitterでご確認くださいませ。

はぜの木

2021年01月14日 (木) 日々の出来事

「能楽師(狂言方)が案内する横浜能楽堂とワークショップ『狂言の舞台裏、大公開!』」を開催しました。

横浜能楽堂では昨年度より能楽師が案内するシリーズ企画として、狂言方とシテ方による催しを実施しています。今年度は狂言方と太鼓方による催しです。まずは、令和2年11月29日(日)に「能楽師(狂言方)が案内する横浜能楽堂とワークショップ『狂言の舞台裏、大公開!』」を開催しました。講師は、狂言方大蔵流・山本東次郎家の山本則重さんと山本則秀さんです。今回の狂言方の企画は少し趣向を変えて、公演前の装束付けをお見せし、作り物の準備を体験していただきました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。当日の様子をご紹介します。

 

最初に本舞台の見所でお話と狂言「附子」の一部を鑑賞しました。

 

太郎冠者と次郎冠者が主人の大切にしている掛け軸を「サラリ サラリ 、パッタリ」と破り、高級な茶碗を「グッラリ、チン」と割ってしまうオーバーな擬音は狂言独特の笑いにくるむ表現であるという解説があり、楽しみながら鑑賞が終わりました。そして、足袋に履き替えて楽屋裏に出発です。

 

【装束の間】
装束の間では、狂言の曲に合わせた肩衣についてと、装束に入れる紋は特定の家紋ではなく逆境でも強く生きていく雪薺(ゆきなずな)の紋を入れる意味などについてお話を聞きました。

 

【鏡の間】
鏡の間では竹でできた作り物の骨組に包帯状の白い布の「ぼうじ」を巻く体験をしました。ぼうじは引っ張りながら巻くので、体験された方は思いの外、力仕事だったのではないでしょうか。

 

【楽屋】
楽屋では実際に装束付けを見ました。
着崩れを防いだり、法被の袖を立てて強く見せるためなど、装束を糸でとじ付けることも能楽師の仕事です。針に糸を通して絹糸を拠って強くするところから準備が始まり、すぐに縫える状態になっているものが「いとはり」です。いとはりは、楽屋ですぐに縫えるように何本かあらかじめ用意してあり、きちんと専用ケースに収まっています。山本則秀さんの専用ケースは山本東次郎さんお手製のもので二十歳の時にプレゼントされたそう、とても大切に使いこまれていました。

 

いとはりで装束をとじ付ける仕事が終わりましたら装束付けです。

 

お話の中で、襦袢の上に着る「胴着」がとても興味深かったのでご紹介します。
胴着は綿入りの羽二重でできていて、どんなに暑い夏でも必ず着るそうです。綿入りなのは体の線を隠し、みんな同じような体形に見せるため。西洋のバレエでは身体は美しいものという考え方ですが、日本では身体は個人的なものなので個性を消すために隠すという考え方だそうです。また、足が長い、スタイルがいい、というような持って生まれたものではなく、自分の努力で獲得したものを評価するという、この胴着に日本人の精神性がとても表されていると感じました。更に興味深かったのは、肌襦袢、胴着、白の着物を3枚重ねたものが裸の表現であるということです。白は有って無いとされる色だからだそうです。

 

【舞台】
本舞台では簡単な足運びを体験しました。140年余りの歴史ある本舞台を歩くという、とても貴重な体験ではなかったでしょうか。

 

最後は見所に戻り質疑応答タイムでした。

 

アンケートでいただきましたコメントをご紹介します。
・普段は客席から見ている舞台の裏側を見られて、とても貴重な体験をさせて頂きました。また能楽師の方が案内して下さるとの事でしたので、興味津々、緊張もありましたが、楽しくワークショップを参加する事ができました。
・能舞台に上がった時は、不思議な感激がありました。
・知らなかった世界を見る事が出来、狂言の舞台もまた少し違った目で見られるようになります。
・舞台裏を知ったり舞台上でない能楽師の方を見られてより身近に親しみを持てた気がする。普段見ること、知ることができないものを解説していただけるのはたいへんありがたい。
・実際に能舞台に立つことが出来、感激しました。狂言方の皆様が縫物から工作までなんでもご自身でされていることにも驚きました。
・バックステージを知ることで狂言の理解が進みました
・ものに、日本独特の考え方がとても興味深かったです。(色、言葉、女性らしさなど)
・とても仲良しなご兄弟でしたので楽しかったです。舞台装置にいろいろな意味があることが興味深かったです。ぜひ観に来たいと思いました。いろいろ質問してすみません。
・親しみやすい山本ご兄弟のご説明で楽しく学べました。ありがとうございました。

 

後日に山本則重さんが、「普通の日常をお見せしただけです。」というようなことをおっしゃっていましたが、私にとっては、狂言の舞台裏は全てが非日常の特別な世界ばかりで興味が尽きませんでした。ご参加いただいた皆さまはいかがでしたでしょうか・・・。
能楽師が案内するシリーズ企画として、2月23日(火・祝)には梶谷英樹さんに講師をお願いして「能楽師(太鼓方)が案内する横浜能楽堂見学と太鼓ワークショップ」を開催します。1月16日(土)から受付を開始します。詳しくはこちら

 

ではまたのご来館をお待ちしております。

 

はぜの木

2020年12月28日 (月) 日々の出来事

「ミニ門松づくりと横浜能楽堂見学」を開催しました。

令和2年12月20日(日)に「ミニ門松づくりと横浜能楽堂見学」を開催しました。募集受付開始後、早々に定員に達しましたので、人気ぶりがうかがわれました。ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。また、ミニ門松づくりは横浜能楽堂では初めての催しのため、実績のある神奈川県立青少年センター指導者育成課の指導員さんに全面的にお世話になりました。ありがとうございました。

 

今回の催しを開催するにあたり、事前に青少年センターにお邪魔し試作品を作ってみました。その際、私は人生で初めて竹を伐る体験をしたのですが、竹挽で伐る感触や伐った後の気分がものすごく気持ちよかったです。新鮮な竹は伐った断面がまだ湿っているという発見もありました。そこで、当初は希望者だけとも考えたのですが、当日は参加者全員に「竹を伐る!」体験をしていただくことになりました。
また、飾り付ける材料として、市販の物も一部購入したのですが、竹、松、南天や千両などの赤い実、木賊などの葉は、横浜能楽堂の庭や指導者育成課の担当者さんのご自宅周辺から直前に採取した「採れたて!」の新鮮なものを準備しました。

 

当日の様子をご紹介します。
午前の回、午後の回ともに予約いただいた20名が全員参加という高い参加率でした。20名を先にミニ門松づくりをするグループと先に施設見学をするグループに分けて密にならない配慮をしました。
ミニ門松づくりを「竹を伐る」ところから始めるとは・・・、参加者の皆さんの多くが想定していなかったのではないでしょうか。伐る感触や伐った後の気分はいかがでしたでしょうか?

 

ただし、予定より竹を伐る時間が多くかかってしまい、飾り付ける時間が足りなくなってしまい申し訳ありませんでした。飾り付けて完成させるところはご自宅でという方も多かったと思います。アンケートでも多くの方から時間が足りなかったとのご意見をいただきました。次回の改善点とさせていただきます。

 

ミニ門松づくりのアンケートでいただいたコメントを少し紹介します。
・自分で竹を伐り製作出来て楽しかった。季節的にいいワークショップでした。もう少し時間にゆとりがあるとよかったです。
・初めての経験で、各自でオリジナルのものが作れるのがとてもよい。とても充実した時間でした。
・庭の松を使っているのはすごいです。時間をもう少しあるといいですね。
・竹を伐ることからやったので満足感があった。

 

全体を通して、ご意見・ご感想もいただきましたのでご紹介します。
・とても勉強になり来年のお正月幸せに過ごせる事と思います。ありがとうございました。
・とても楽しかったです。季節感のある企画はとても楽しいです。四季折々企画があるとさらにとても良いと思います。

 

お持ち帰りいただいたミニ門松はご自宅で飾り付けを完成されましたでしょうか?玄関やお部屋などに飾っていただけましたらとても嬉しいです。
そして、どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。また来年も横浜能楽堂をどうぞよろしくお願いいたします。公演、ワークショップ、施設見学などでお会いできることを楽しみにしております。

 

はぜの木

2020年12月28日 (月) 日々の出来事

「横浜能楽堂伝統文化一日体験オープンデー」を開催しました。

令和2年12月6日(日)に「横浜能楽堂伝統文化一日体験オープンデー」を開催しました。昨年に続き、今年で2回目となります。多くの方にお楽しみいただけるように、仕舞鑑賞・舞台裏見学・小鼓体験・太鼓体験・おりがみ・一閑張りの6つのプログラムを準備しました。今年は、新型コロナウイルス感染症対策のため、開催を冬にずらし、定員数を少なめに設定し、全てのプログラムを事前予約制としました。ご参加いただいた皆さま、ご協力いただきありがとうございました。当日の様子をご紹介します。

 

【仕舞鑑賞】
シテ方金春流の山井綱雄さん、地謡の本田布由樹さん、中村昌弘さんにご出演いただきました。11:00の回では仕舞「高砂」「井筒」「舟弁慶 キリ」、14:00の回では仕舞「加茂」「松風」「鐘馗」と、異なる曲でしたので両方の回にご参加いただいた方もいらっしゃったようです。山井綱雄さんの熱心なお話に私もとても引き込まれました。

 

仕舞鑑賞についてアンケートでいただいたコメントをご紹介します。
・素人に分かりやすく当たっていただけてありがたく感じました。仕舞の前に一つ一つ解説があり入りやすく、山井先生がお話上手なのもあって楽しく拝見しました。
・お仕舞すごく素敵でした。お謡も迫力がありました。
・能楽師さんの気持ちが伝わってきた。演じる時は神というかその人物になりきっているのに感動した。

 

【舞台裏見学】
山井綱雄さんに装束の間と鏡の間でお話をしていただき、本田布由樹さん、中村昌弘さんに幕を揚げる実演をしていただきました。能楽師による幕揚げを見られるチャンスはそうそうあません。また、参加者の皆さんにも幕揚げ体験をしていただきました。鏡の間から見た舞台の景色はいかがでしたでしょうか?

 

【小鼓体験】
小鼓方観世流の岡本はる奈さんに講師をお願いしました。昨年も大人気でしたが、今年も募集受付開始後、あっという間に定員に達しました。参加された方はとてもラッキーだったと思います。小鼓の持ち方、打ち方を楽しく教えていただきました。

 

【太鼓体験】
太鼓方金春流の梶谷英樹さんに講師をお願いしました。太鼓体験は今年初めてのプログラムでしたが、こちらもすぐに定員に達しました。バチの持ち方、金春流の打ち方を教えていただきました。20分という短い時間でしたが、太鼓の魅力を感じていただけましたら嬉しいです。

 

小鼓・太鼓についてアンケートでいただいたコメントをご紹介します。
・はじめて触れたので非常に印象深く楽しませていただきました。
・持ち方ひとつからびっくりする程奥が深いし、とても楽しかった。
・太鼓の置く角度やバチが民謡の太鼓と違うのが分かり興味深かった。

 

令和3年2月23日(火・祝)には梶谷英樹さんに講師をお願いして「能楽師(太鼓方)が案内する横浜能楽堂見学と太鼓ワークショップ」を開催します。1月16日(土)から受付を開始します。詳しくはこちら

 

【おりがみ】
日本折紙協会認定講師の山崎雅翔さんに講師をお願いし、神奈川県青少年センター指導者育成課からもユースサポーターさんに応援に来ていただき、参加者の皆さんが折りたいと思うおりがみ作品を作りました。会場は終始楽しい空気でいっぱいでした。当日の様子を山崎雅翔さんがご自身のブログで公開していました。こちらをどうぞ

 

【一閑張り】
一閑張り利庵を主催されている鏡原利子さんに講師をお願いし、一閑張りによるクリスマス・お正月にぴったりなトレーを作りました。今回の参加者はお子さまや男性もいらっしゃったのが印象的でした。老若男女を問わずどんな参加者も楽しませる鏡原利子さんのトークがすごいと思いました。材料は同じなのですが、貼る和紙のデザインや位置により世界に一つだけのオリジナル作品ができあがりました。作品とともに写真撮影する参加者の皆さまの笑顔が素敵でした。

 

全体を通して、アンケートでは貴重なご意見やご要望などもいただきましたので一部ご紹介します。
・子どもと一緒に参加できるイベントを企画していただけるとありがたいです。
・お子さまの参加もあり、家族で体験できるのが良いと思いました。来年は家族も誘いたいと思いました。
・子ども向けのワークショップの開催を希望。能は大人にとっても敷居が高いので、門外漢や若い世代も触れる機会を持てる様、有料でも良いので単発で参加できるイベントがあるといいなと思います。
・もっと情報を沢山発信してほしい。今回初めてこのような取り組みを知りました。魅力的な企画なのにもったいないです。

 

いただきましたご意見やご要望は来年の企画の参考にさせていただきます。ではまたのご来館をお待ちしております。

 

はぜの木

2020年04月23日 (木) 日々の出来事

臨時休館中に『橋がかり』について考えてみました。

能舞台では、三間四方の本舞台から揚げ幕の裏にある鏡の間へとつながる通路があります。舞台と鏡の間に掛け渡された橋という意味合いから橋掛り(橋ガカリ)と表記され呼ばれているようです。舞台の一部で、また演出上とても重要な役割を担っています。

能舞台を上から見た図

 

 

以前に横浜能楽堂の設計者の大江新先生から聞いた話なのですが、他の能楽堂の橋掛りには背面の壁までの隙間が少ない、またはまったくないケースがあるのですが、横浜能楽堂では壁が離れた位置にあり橋掛りの屋根がちゃんとあるので、もともと能舞台が屋外にあった時の雰囲気が感じられる橋掛りであるということでした。屋外にあった能舞台が近代以降能楽堂という建築の内部に取り込まれました。特に現代では様々な敷地・建築上の制約等があると思います。横浜能楽堂においても決してゆとりある敷地・建築条件ではなかったと思います。もしかしたら、舞台と鏡の間の掛け橋である橋掛りをとても重視したので屋外にあった頃の橋掛りのように壁から離したのでは・・・と妄想しています。

 

 

橋掛りといえば、横浜能楽堂催し物案内『橋がかり』をご存知でしょうか。横浜能楽堂の主催公演・ワークショップ・貸館情報などを掲載している毎月25日頃に定期的に発行している情報紙です。
臨時休館中の今月も発行準備中なのですが、新型コロナの影響を受けちょっと紙面がさみしくなっています。バックナンバーの『橋がかり』はどうだったかなと振り返ってみました。

横浜能楽堂開館当初は、『橋がかり』ではなく『横浜能楽堂ごよみ』という情報紙でした。平成8年11月~9年1月号からで主催公演・貸館情報などを掲載しています。平成12年1月~2月号まで続いていました。各号毎に季節感あふれる表紙のイラストが印象的です。平成8年11月~9年1月号は紅葉、平成8年12月~9年2月号は柊、平成9年2月~4月号は松竹梅。まさに「こよみ」をお届けしていたのですね。

 

 

この『横浜能楽堂ごよみ』とは別に、平成10年4月に季刊『橋がかり』の発行が始まります。こちらは、主催公演の「見どころ聴きどころ」、能楽について初心者向けに解説した「初めて知る能・狂言の世界」、能楽についての質問に答える「能楽質問箱」、能楽師による「エッセイ能楽とっておきの話」という構成で読み物的な要素満載です。平成12年1月号まで続いていました。
第一号の表紙はこんなデザインでした。ちなみに表紙題字は当時の横浜市長の高秀秀信さんです。

 

 

第1号の「能楽質問箱」の質問は以下の内容でした。
Q.小鼓を習いたいのですが、どうしたら良いでしょうか? 月謝は、どのくらいかかるのでしょうか?
Q.どうして流儀は五つしかないのでしょうか?
Q.能楽師にはどうしたらなれるのでしょうか。だれでもなれるのでしょうか?

 

今から20年以上前の質問ですが、今も通用する普遍的な質問でとても興味深いです。質問箱は、インターネットが普及する前の能楽堂と皆さまとの双方向コミュニケーションツールだったのだと感じました。内容は復刻「能楽質問箱」として別の機会に皆さまにご紹介できればと思います。
『横浜能楽堂ごよみ』と季刊『橋がかり』はその後、平成12年4月より現在の主催公演・ワークショップ・貸館情報などを掲載する構成の毎月25日頃発行する『橋がかり』となりました。表紙のデザインは、その年の年間スケジュールのデザインに合わせて決め、紙の色はさくら色、若草色、水色、レモン色の4色を月替わりに変えています。

 

今回の臨時休館中でなければ振り返ることがなかったかもしれない横浜能楽堂の『橋がかり』ヒストリーを知ることができました。
そして、能舞台における橋掛り同様、臨時休館中の今月も横浜能楽堂と皆さまの架け橋となるよう思いをこめて『橋がかり』をお届けさせていただきます。お家にいながら横浜能楽堂を思い出していただけましたら幸いです。

 

ダウンロードはこちら  横浜能楽堂『橋がかり』2020年5月~6月

 

はぜの木

2019年09月07日 (土) 日々の出来事

横浜能楽堂伝統文化一日体験オープンデーを開催しました。

8月16日(金)に伝統文化一日体験オープンデーを開催。鑑賞・体験・ものづくり・伝承あそびなど7つのプログラムを実施、横浜能楽堂として初めての試みでした。来館者人数約590名、プログラム参加延べ人数約910名と、とても多くの方にご来館・ご参加いただきありがとうございました。当日の様子などをご紹介します。

 

仕舞鑑賞

講師は山井綱雄先生(シテ方金春流)にお願いしました。2回で約300名程度のお客様に鑑賞していただきました。お話がとてもわかりやすく仕舞も大変好評でした。アンケートでは、一番良かったプログラムのNo.1でした!

 

箏曲体験

講師は橘学苑高等学校筝曲部の皆さまにお願いしました。夏休み返上で事前練習~当日運営まで部員さんが主体となり、がんばってくださいました。1回目と2回目は第二舞台からお客さまがあふれるほどの大盛況ぶりでした。

筝曲部の部員さんの感想を少し紹介しますね。

・普段演奏するときは、他の部や他の団体と一緒に参加することが多いので、お客様はいろいろな演奏を聴くことになるけれど、今回は私たちの演奏を聴いたりお箏を触れたりするためだけに会場にいらっしゃったお客様で、その分緊張したし、嬉しさもあった。

・もうきっと横浜能楽堂で演奏できることはないと思うので、貴重な体験になった。

 

小鼓体験

講師は岡本はる奈先生(小鼓方観世流)にお願いしました。日常生活では邦楽器に触れる機会がなかなか無いようで、想定をはるかに超える参加のご希望があり、大変な人気でした。研修室という小さなお部屋で実施しましたので、急遽整理券を配布し、見学スペースも一杯になりお断りすることもありました。体験できなかった皆さまには、この場を借りてお詫びさせていただきます。岡本先生は横浜能楽堂にて毎月お稽古のお教室も開催していらっしゃいます。

 

舞台とバックヤードツアー

1回目87名、2回目111名と多くの方にご参加いただきました。揚幕体験や普段見ることのない切戸口からの舞台の景色をお楽しみいただけましたでしょうか。整理券配布の際にお待たせしてしまったお客さまには申し訳ありませんでした。

 

けん玉・ベーゴマ・わらべうたと遊ぼう!

講師は神奈川県青少年センター指導者育成課と田村さん、下田さん、清水さん、その他ボランティアの皆さんにお願いしました。2階のラウンジという少し奥まったスペースでの実施ではありましたが、いつもお客さまのにぎわいがありました。いろいろな世代のお客さまが一緒に楽しむことのできるよい時間ではなかったかと思います。

 

和紙で作る風船ランプシェード

講師は神奈川県立青少年センター科学部にお願いしました。お子さまたちが夢中になって和紙を貼っている姿が印象的でした。お家で使っていただけてますでしょうか。ランプを点けた時に横浜能楽堂を思い出していただけたら幸いです。

 

一閑張りで作る渋うちわ

講師は一閑張り利庵の鏡原様にお願いしました。事前予約ではすぐに満席となり、欠席の連絡でお席が空くとまたすぐに満席になるという人気ぶりでした。幅広い世代の方にご参加いただたきました。思い思いの作品ができあがりとても満足していただけたようです。鏡原様は横浜能楽堂研修室にて毎月一閑張りのお教室を開催されています。

 

アンケートにご協力をいただきありがとうございました。プログラムを楽しんでいただけた方がいらっしゃる一方で、整理券配布や館内案内など、今回初めての開催のため運営面での不手際があり申し訳ございませんでした。どうかご容赦くださいませ。次回開催時の課題とさせていただきます。

主な自由意見をご紹介します。

[50代男性]

・山井先生のお話がとても上手で聞きやすく、仕舞もすばらしかったです。またバックヤードの見学も初めてで、とても興味深く見学することが出来ました。

[40代男性]

・運よく、箏・小鼓・ツアーの3つすべて体験出来ました。楽器にふれられる方がもう少し増えるといいなと思いました。

[80代女性]

・とてもいいこと。子供達への文化の伝承、知能ばかり優先されてる今、あそびながら頭からだ共に育つ、のびていくこと、すばらしい。これからもぜひ続けて頂きたい!!!

[50代女性]

・小鼓体験;整理券配布時間の記載をしてほしかった(体験希望で訪れたのに!)

・箏曲体験;高校生が率先してワークショップを行っているのが良い!演奏も素敵でした!

・滅多にできない経験で、とても面白かった。触れる機会をつくっていただいてありがとうございます。説明もとても分かりやすかったです。(小鼓体験)

 

講師をお引きうけくださいました、山井先生、橘学苑箏曲部の皆さま、岡本先生、青少年センター指導者育成課他の皆さま、青少年センター科学部の皆さま、鏡原様、その他関係者の皆さま、ご協力いただいきありがとうございました。そしてご来館いただきました皆さま、本当にありがとうございました。ぜひまた横浜能楽堂でお会いしましょう!

 

はぜの木

2019年09月07日 (土) 日々の出来事

浴衣ワークショップ&狂言鑑賞会を開催しました。

8月11日(日)午前中に浴衣ワークショップ、午後から狂言鑑賞会を開催しました。参加者は10名。ハクビ株式会社着付師が10名に4名もついてくださり、とってもプライベート感満載なワークショップになりました。当日の様子をご紹介します。

 

まずは3つのグループに分かれて持ち物を確認し、早速スタート。下着を着けてタオルで補正をして浴衣を着て帯を結ぶ、というプロセスです。浴衣を着て帯を結ぶプロセス部分は何度も繰り返して練習しました。

 

今回、ハクビさんと事前打合せをする中で、半幅の帯結びを3種類から選べるようにお願いしました。下の写真の左から「男結び(貝の口)」、「蝶結び」、「リボン返し」です。オーソドックスな結び方だけでなく変わり結びを入れていただくようにお願いしましたら、「リボン返し」ということになりました。

 

 

参加者の皆さまはご自分の浴衣や帯に合う帯結びを選んで何度もチャレンジしていました。「手結びはできあがった付け帯とはふっくらした感じが違う」、「同じリボン返しの結び方でも帯の色柄の出し方を変えると全く違って見える」、などの感想がありました。

私自身も、リボン返しは半幅帯の裏の出し方を変えることにより同じ帯を何通りにも変えられる結び方だと感じました。

 

参加者の帯結びを接写しました。一つとして同じ表情が無く、無限の多様性ですね~。

「男結び(貝の口」)

「蝶結び」

「リボン返し」

「リボン返し」

 

 

そして、お昼を食べて午後からは狂言鑑賞会として、「横浜狂言堂」公演へ。和泉流で「清水」、「悪太郎」を鑑賞しました。初めて鑑賞された方からは、「お話があったのでとてもわかりやすく内容がはいってきた」、という感想がありました。

 

最期に皆さまで集合写真をパチリ!

 

 

参加者の皆さま、ハクビの着付師の皆さま、ありがとうございました。今年の夏の素敵な浴衣の思い出にしていただけましたらとても幸いです。

 

はぜの木

2019年05月03日 (金) 日々の出来事

桜の「作り物」

横浜では桜もすっかり新緑となりましたが、東北では満開のようですね。

実は横浜能楽堂の桜も今満開です。

というのは、「作り物」の桜がきれいになったのです!

 

「作り物」とは、一般的に使われる「模造品」「まがいもの」の意味ではなく、能や狂言で使用される松や鐘などの大道具のことを指します。

鐘や舟、大宮と呼ばれる「作り物」などは、上演の際に、出演者が竹でできた枠組みを組み立て、ぼうじと呼ばれる布で巻いたり、きれいな布をつけたりして作ります。松や桜、牡丹など木の「作り物」については、おおよそそのままで使用します。

 

↓こんな竹の枠組みを組み合わせたりしています。真ん中下にある白い布が「ぼうじ」です。

 

 

横浜能楽堂では、元々桜の木の「作り物」を所蔵していたのですが、花びらが色あせてしまい、5月25日に狂言「花盗人」で使用するということで、花びらを直してもらい、こんな風にきれいになりました。とっても華やかになり、嬉しい限りです。

 

 

桜の魅力に見せられてつい盗んでしまった僧のお話・狂言「花盗人」。

桜の「作り物」も出てきますので、ぜひ見に来てください。

公演詳細は↓

https://yokohama-nohgakudou.org/schedule/

 

ぼたん

2018年12月16日 (日) 日々の出来事

室内装飾織物のお話

先日、京都迎賓館を参観してきました。少し前に赤坂迎賓館の和風別館を参観した際に、日本の伝統建築空間はやっぱりすごい!と感動したのですが、その比ではありません。建築も庭園も室内の工芸品も、まさに日本の伝統技術の粋を集めた、それはもう博物館や美術館のような美しさでした。それらが一体となり、日本が世界に誇ることのできる、超一流のおもてなし空間になっているんだなぁ~と思いました。

京都迎賓館のホームページには次のようにあります。

 

「日本の伝統技能の粋を集めた最高のおもてなしの場

京都迎賓館は日本の歴史、文化を象徴する都市・京都で、海外からの賓客を心をこめてお迎えし、日本への理解と友好を深めていただく施設として平成17年に建設されました。

歴史的景観や周辺の自然環境との調和を図るため、日本の伝統的な住居である入母屋(いりもや)屋根と数寄屋(すきや)造りの外観とし、品格のある和風の佇まいを創出しています。

建物や調度品には、数寄屋大工、左官、作庭、截金(きりかね)、西陣織や蒔絵(まきえ)、 漆など、数多くの京都を代表する伝統技能において匠の技を用いています。」

 

全てをご紹介したいところですが、ここではその中の一例の「夕映の間」の壁面の織物についてご紹介します。

「夕映の間」のお部屋の紹介として前述のホームページには次のようにあります。

 

「大臣会合などの会議や立礼式(りゅうれいしき)のお茶のおもてなし、晩餐会の待合として使用されています。 東西の壁面を装飾する「比叡月映(ひえいげつえい)」、「愛宕夕照(あたごゆうしょう)」という二つの織物作品の一文字ずつをとって、この部屋を「夕映の間」と呼んでいます。」

 

写真は「比叡月映」と「愛宕夕照」側の壁面写真です。

私がとても印象的だと思ったのは、東西の綴織はもちろん大変素晴らのですが、その作品まわりの幅木、柱、長押、回り縁で囲まれた壁面にも、2つの作品の山や空の色にぴったりな無地の織物が貼られているということです。とてもやさしい水色です。その壁は塗料や壁紙ではなく、綴織の作品にあわせた色の織物貼りでなくてはいけなかったんだろうなぁ~、と設計者の意図を想像しました。

 

日本の伝統技術の粋として、京都迎賓館「夕映の間」の壁面の織物をご紹介しましたが、横浜能楽堂にも、とても素敵な室内装飾織物があることをご存知でしょうか?

 

[玄関広間カウンター腰部&見所前室扉]

カウンター腰部と見所前室扉の織物がお揃いになっています。お気づきでしたでしょうか?また、見所前室扉の表側と裏側も同じです。表側は裏側より日射の影響を受けるため、少し色あせています。

拡大すると写真のようになっています。文様は疋田りんどう錦です。

 

[第二舞台前室飾り棚部]

写真は第二舞台前室飾り棚部です。第二舞台というのは、地下1階にある舞台で、伝統芸能に関するお稽古や小規模の発表会等のご利用のお客様にお貸出しています。第二舞台のドアを開けると渋い文様の織物が目に入ってきます。

拡大すると写真のようになっています。文様は小丸龍です。

 

[装束の間地袋 有栖川錦(馬手)]

写真は私が最も気に入っている装束の間の地袋です。装束の間とは、能の公演の際にシテ方が装束を着けるお部屋です。このお部屋の地袋を見てみると欅の天板の下に華麗な織物が貼られています。装束の間だからこの華やかな色柄が選ばれたのでしょうか・・・。

拡大すると写真のようになっています。文様は有栖川錦(馬手)です。

 

 

横浜能楽堂の室内装飾織物の一部、いかがでしたでしょうか?私は、京都迎賓館「夕映の間」同様、なぜこの壁に織物が貼られたのか?という設計者の意図を勝手に想像して楽しんでおります。次回お越しの際には、室内装飾織物にも目を留めていただけますと幸いです。

 

横浜能楽堂では、能や狂言の公演、ワークショップなどの催しはもちろん、施設見学会(無料)も開催しております。年明け最初の予定は1月10日(木)10:00~11:00です。

皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

 

はぜの木

2018年11月26日 (月) 日々の出来事

熱海の休日

さわやかな秋。熱海に行きました。

熱海のイメージといえば、温泉、海、昭和の雰囲気・・・

マンホールに温泉のマーク

 

昭和のイメージ?!

 

やっぱり、海!

 

駅ビルを出るとすぐにある平和通り商店街。ひもの屋さんにはおいしそうな海産物が並び、店頭で食べられるスペースがあります。お昼前でしたが、生シラス、生桜えび、豆イワシをいただきました。

 

散策しながら来宮神社へ。境内、本殿はもちろんのこと、喫茶スペース等もとても美しく整備されていて、たくさんの参拝者がいました。

 

来宮神社は来宮駅の近く。地図によると「健康パン」というパン屋さんがあるはずなので、探してみると、「健康パン」という名のお饅頭屋さんでした。

来宮神社の御祭神に麦こがし、橙、ところ、百合根をお供えしたところ大変喜ばれたという古記が伝わるそうで、神社の来福スウィーツにはそれにちなんだお菓子がいろいろあります。その一つが、この「健康パン」のこがし饅頭。麦こがしの香ばしい香りと、上品な甘さのこしあんがとてもおいしい逸品でした。

 

起雲閣を目指して歩き始めました。途中に湯前神社や温泉寺といった、温泉地ならではの寺社がや、熱海七湯の大湯間欠泉や風呂の湯・水の湯という源泉もありました。このうち、大湯間欠泉は世界三大間欠泉の一つに数えられていたそうです(他の2か所は、アメリカ・ワオミング州のイエローストーン公園内オールド・フェイスフル・ガイザー、アイスランドのグレートゲイシール)。

 

間欠泉の横には明治期の電話ボックスを復元したものがあり、「市外通話創始の地」の碑。国内で初めて市外通話のが始まったのが、明治22年(1889年)、熱海と東京結ぶ市外通話だったとのこと。

ちなみに、山手の元町公園にも明治期の電話ボックスがあります。こちらは電話創業(明治23年)100年を記念して平成2年に設置されたもので、日本で初めて(明治33年)京橋に建てられた電話ボックスを再現しています。

 

寄り道ばかりしていたので、起雲閣に着いたのは夕方近く。起雲閣は大正8年に別荘として建てられ、昭和22年に旅館として営業を開始し、太宰治や谷崎潤一郎、尾崎紅葉ら数多くの文豪にも愛された熱海を代表する宿の一つでした。

 

熱海といえば、「金色夜叉」。貫一・お宮。

 

東海道線で横浜から熱海行きに乗れば1時間10分くらいで、日帰りできる近さ。充実した休日を過ごせるすてきな街。またのんびり訪れたいです。

 

トラ子

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