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2018年12月16日 (日) 内容

室内装飾織物のお話

先日、京都迎賓館を参観してきました。少し前に赤坂迎賓館の和風別館を参観した際に、日本の伝統建築空間はやっぱりすごい!と感動したのですが、その比ではありません。建築も庭園も室内の工芸品も、まさに日本の伝統技術の粋を集めた、それはもう博物館や美術館のような美しさでした。それらが一体となり、日本が世界に誇ることのできる、超一流のおもてなし空間になっているんだなぁ~と思いました。

京都迎賓館のホームページには次のようにあります。

 

「日本の伝統技能の粋を集めた最高のおもてなしの場

京都迎賓館は日本の歴史、文化を象徴する都市・京都で、海外からの賓客を心をこめてお迎えし、日本への理解と友好を深めていただく施設として平成17年に建設されました。

歴史的景観や周辺の自然環境との調和を図るため、日本の伝統的な住居である入母屋(いりもや)屋根と数寄屋(すきや)造りの外観とし、品格のある和風の佇まいを創出しています。

建物や調度品には、数寄屋大工、左官、作庭、截金(きりかね)、西陣織や蒔絵(まきえ)、 漆など、数多くの京都を代表する伝統技能において匠の技を用いています。」

 

全てをご紹介したいところですが、ここではその中の一例の「夕映の間」の壁面の織物についてご紹介します。

「夕映の間」のお部屋の紹介として前述のホームページには次のようにあります。

 

「大臣会合などの会議や立礼式(りゅうれいしき)のお茶のおもてなし、晩餐会の待合として使用されています。 東西の壁面を装飾する「比叡月映(ひえいげつえい)」、「愛宕夕照(あたごゆうしょう)」という二つの織物作品の一文字ずつをとって、この部屋を「夕映の間」と呼んでいます。」

 

写真は「比叡月映」と「愛宕夕照」側の壁面写真です。

私がとても印象的だと思ったのは、東西の綴織はもちろん大変素晴らのですが、その作品まわりの幅木、柱、長押、回り縁で囲まれた壁面にも、2つの作品の山や空の色にぴったりな無地の織物が貼られているということです。とてもやさしい水色です。その壁は塗料や壁紙ではなく、綴織の作品にあわせた色の織物貼りでなくてはいけなかったんだろうなぁ~、と設計者の意図を想像しました。

 

日本の伝統技術の粋として、京都迎賓館「夕映の間」の壁面の織物をご紹介しましたが、横浜能楽堂にも、とても素敵な室内装飾織物があることをご存知でしょうか?

 

[玄関広間カウンター腰部&見所前室扉]

カウンター腰部と見所前室扉の織物がお揃いになっています。お気づきでしたでしょうか?また、見所前室扉の表側と裏側も同じです。表側は裏側より日射の影響を受けるため、少し色あせています。

拡大すると写真のようになっています。文様は疋田りんどう錦です。

 

[第二舞台前室飾り棚部]

写真は第二舞台前室飾り棚部です。第二舞台というのは、地下1階にある舞台で、伝統芸能に関するお稽古や小規模の発表会等のご利用のお客様にお貸出しています。第二舞台のドアを開けると渋い文様の織物が目に入ってきます。

拡大すると写真のようになっています。文様は小丸龍です。

 

[装束の間地袋 有栖川錦(馬手)]

写真は私が最も気に入っている装束の間の地袋です。装束の間とは、能の公演の際にシテ方が装束を着けるお部屋です。このお部屋の地袋を見てみると欅の天板の下に華麗な織物が貼られています。装束の間だからこの華やかな色柄が選ばれたのでしょうか・・・。

拡大すると写真のようになっています。文様は有栖川錦(馬手)です。

 

 

横浜能楽堂の室内装飾織物の一部、いかがでしたでしょうか?私は、京都迎賓館「夕映の間」同様、なぜこの壁に織物が貼られたのか?という設計者の意図を勝手に想像して楽しんでおります。次回お越しの際には、室内装飾織物にも目を留めていただけますと幸いです。

 

横浜能楽堂では、能や狂言の公演、ワークショップなどの催しはもちろん、施設見学会(無料)も開催しております。年明け最初の予定は1月10日(木)10:00~11:00です。

皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

 

はぜの木

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