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2020年04月23日 (木) 内容

臨時休館中に『橋がかり』について考えてみました。

能舞台では、三間四方の本舞台から揚げ幕の裏にある鏡の間へとつながる通路があります。舞台と鏡の間に掛け渡された橋という意味合いから橋掛り(橋ガカリ)と表記され呼ばれているようです。舞台の一部で、また演出上とても重要な役割を担っています。

能舞台を上から見た図

 

 

以前に横浜能楽堂の設計者の大江新先生から聞いた話なのですが、他の能楽堂の橋掛りには背面の壁までの隙間が少ない、またはまったくないケースがあるのですが、横浜能楽堂では壁が離れた位置にあり橋掛りの屋根がちゃんとあるので、もともと能舞台が屋外にあった時の雰囲気が感じられる橋掛りであるということでした。屋外にあった能舞台が近代以降能楽堂という建築の内部に取り込まれました。特に現代では様々な敷地・建築上の制約等があると思います。横浜能楽堂においても決してゆとりある敷地・建築条件ではなかったと思います。もしかしたら、舞台と鏡の間の掛け橋である橋掛りをとても重視したので屋外にあった頃の橋掛りのように壁から離したのでは・・・と妄想しています。

 

 

橋掛りといえば、横浜能楽堂催し物案内『橋がかり』をご存知でしょうか。横浜能楽堂の主催公演・ワークショップ・貸館情報などを掲載している毎月25日頃に定期的に発行している情報紙です。
臨時休館中の今月も発行準備中なのですが、新型コロナの影響を受けちょっと紙面がさみしくなっています。バックナンバーの『橋がかり』はどうだったかなと振り返ってみました。

横浜能楽堂開館当初は、『橋がかり』ではなく『横浜能楽堂ごよみ』という情報紙でした。平成8年11月~9年1月号からで主催公演・貸館情報などを掲載しています。平成12年1月~2月号まで続いていました。各号毎に季節感あふれる表紙のイラストが印象的です。平成8年11月~9年1月号は紅葉、平成8年12月~9年2月号は柊、平成9年2月~4月号は松竹梅。まさに「こよみ」をお届けしていたのですね。

 

 

この『横浜能楽堂ごよみ』とは別に、平成10年4月に季刊『橋がかり』の発行が始まります。こちらは、主催公演の「見どころ聴きどころ」、能楽について初心者向けに解説した「初めて知る能・狂言の世界」、能楽についての質問に答える「能楽質問箱」、能楽師による「エッセイ能楽とっておきの話」という構成で読み物的な要素満載です。平成12年1月号まで続いていました。
第一号の表紙はこんなデザインでした。ちなみに表紙題字は当時の横浜市長の高秀秀信さんです。

 

 

第1号の「能楽質問箱」の質問は以下の内容でした。
Q.小鼓を習いたいのですが、どうしたら良いでしょうか? 月謝は、どのくらいかかるのでしょうか?
Q.どうして流儀は五つしかないのでしょうか?
Q.能楽師にはどうしたらなれるのでしょうか。だれでもなれるのでしょうか?

 

今から20年以上前の質問ですが、今も通用する普遍的な質問でとても興味深いです。質問箱は、インターネットが普及する前の能楽堂と皆さまとの双方向コミュニケーションツールだったのだと感じました。内容は復刻「能楽質問箱」として別の機会に皆さまにご紹介できればと思います。
『横浜能楽堂ごよみ』と季刊『橋がかり』はその後、平成12年4月より現在の主催公演・ワークショップ・貸館情報などを掲載する構成の毎月25日頃発行する『橋がかり』となりました。表紙のデザインは、その年の年間スケジュールのデザインに合わせて決め、紙の色はさくら色、若草色、水色、レモン色の4色を月替わりに変えています。

 

今回の臨時休館中でなければ振り返ることがなかったかもしれない横浜能楽堂の『橋がかり』ヒストリーを知ることができました。
そして、能舞台における橋掛り同様、臨時休館中の今月も横浜能楽堂と皆さまの架け橋となるよう思いをこめて『橋がかり』をお届けさせていただきます。お家にいながら横浜能楽堂を思い出していただけましたら幸いです。

 

ダウンロードはこちら  横浜能楽堂『橋がかり』2020年5月~6月

 

はぜの木

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