2013年09月19日 (木) その他
読書の秋、芸術の秋
8月の溶けてしまいそうな猛烈な暑さも、少し和らぎ、秋が近づいているのかな・・・と思わせる今日この頃。
そんな読書の秋におすすめ・・・というか、最近読んだ本をご紹介したいと思います。
1冊目は、「読んで愉しむ 能の世界」。
9月1日に開催された企画公演「時々の花」第1回での解説も好評だった馬場あき子さんの著書。昭和50年に発刊された「花と余情」という本に、「新・能楽ジャーナル」で連載されていた「作り物随想」を併収し、平成21年再版されたものです。
内容は能の作品の解説書なのですが、一般的な解説書が、あらすじや見どころを簡潔に記載し、より多くの曲目を紹介しようとしているのに対し、本書は16曲にしぼり、一つ一つの作品の見どころ聞きどころ、舞台進行や詞章についての丁寧な説明、深い考察が加えられています。題材となる古典文学や和歌、そして「申楽談儀」や「隣忠秘抄」といった能の伝書などを引用しながら、馬場さんらしい感性の豊かさと、瑞々しい表現で綴られた文章は、今まで知らなかった作品の魅力に気づかされ、読み進めるのが本当に楽しい、まさにタイトル通りの内容。初心者の方から、能が好きな方までおすすめできる本だと思います。
そして、企画公演「時々の花」10月26日の第2回、12月21日の第3回では、どんなお話を聞けるのか、こちらもお楽しみに!
もう1冊は与那原恵・著の「首里城への坂道 鎌倉芳太郎と近代沖縄の群像」。
鎌倉芳太郎の名前は、沖縄の文化関係の書籍を読むと必ずと言ってよいほど登場しますし、2年前に行った特別展「祝いの色と文様」での紅型の展示を通じて、当時衰退しかけていた紅型の技術の研究や型紙の収集を行い、戦後の紅型の復興に寄与した重要な人物として認識があったので、その生涯についてもっと知りたいな、とひそかに思っていました。
本書では美術教師として沖縄に赴任した鎌倉芳太郎が沖縄に魅せられ、琉球王朝の崩壊により失われつつあった文化について幅広く調査・記録、写真や資料を残し、それらの資料、そして鎌倉の熱意が琉球文化を現代まで残していくことにどれだけ重要な役割を果たしたかが、非常にドラマティックに描かれています。また、同じく琉球文化に魅せられ、研究等を行った、伊波普猷、末吉麦門冬、伊藤忠太らの活動も描かれることで、明治以降の沖縄の芸術文化の分野における研究、保存、継承の歴史の流れが良く分かる内容になっています。今後、沖縄の文化に触れるにあたり、それらを残そうとした先人の思いを感じずにはいられないであろう、そんな気分にさせてくれる一冊です!
そして、この書籍の舞台・首里に建ち、鎌倉芳太郎の資料の多くが保存されている沖縄県立芸術大学。ここを卒業し、現在、第一線で活躍する琉球舞踊家たちが出演する公演「琉球舞踊 受け継がれる伝統-古典・雑踊・創作-」が11月9日(土)に開催されます。琉球王朝時代からの古典舞踊、明治以降に創作された雑踊、そして今回の公演のために作られた新作も上演される、見逃せない公演。チケット好評発売中です。
また、公演に併せ、10月13日(日)から12月8日(日)まで、2階の展示廊では、特別展「歌う 踊る 弾く-琉球張り子・豊永盛人の世界」が開催されます。沖縄各地でハーリー(爬竜船競争)が行われる旧暦5月4日のユッカヌヒー。かつて、この日には玩具市が並び、こどもの健やかな成長を願い、張り子を買い与えたそうですが、明治以降の玩具の発達、また沖縄戦でその文化も衰退してしまいました(鎌倉芳太郎の写真資料の中に、今では殆どが失われてしまった戦前の琉球張り子もあるそうです)。その伝統的な琉球張り子の技術を継承し、またオリジナリティあふれる創作活動を行うことで、注目を集めるアーティスト・豊永盛人の初の本格的な個展になります。どうぞご期待下さい。
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