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2018年07月21日 (土) 日常

能楽堂の建築についてのお話です。(天井のお話)

横浜能楽堂建築の素敵ポイントについて、今回は天井のお話です。

以前に楽屋玄関の「萌黄地蓮華文錦(緑)」の織物が貼られている格天井をご紹介しました。能楽堂内にはその他にも素敵な天井があります!

 

まず2階レストランスペースの天井です。

白い漆喰の格子とその間の木の板のコントラストが明快な格天井(ごうてんじょう)です。

この木の板にはとても歴史があります。

横浜能楽堂の本舞台は、明治8年に東京・根岸の旧加賀藩・前田斉泰邸に建立され、大正8年に染井に移築され、その後に横浜に復原されたものです。根岸時代の舞台は前田斉泰さんが亡くなられた後、一時応接間に仮使用されたため杉板の格天井に改造したそうです。横浜の本舞台では天井板を貼らない化粧屋根裏仕上げとしたため、根岸時代の古材天井板をレストランスペースの天井板に転用使用したということです。レストランスペース入口に杉板の由来を説明したプレートがあります。

明治、大正、昭和、平成の時代を経てきた杉の板の木目に長~い長~い歴史を感じます。

レストランスペースの格天井の杉板

 

次は1階歩廊(ほろう)の天井です。

見所(客席)入口ドア前の通路のスペースのことを歩廊と呼んでいます。

以前、施設見学日の際にお客様から「あの天井の文様は何でしょうか?」というご質問がありました。

資料によりますと「いちご裂(孔雀)」と記してあります。いちご裂とは通常、12弁の花紋をいちごに見立ててそう呼ぶらしいのですが、天井をよお~く見てみますと花紋ではなく孔雀の文様です。そのため(孔雀)と記されているのでしょうか・・・。

色味は木部としっくり調和しつつ、孔雀文様が歩廊スペースに華やかさと楽しさを演出しています。

歩廊の天井の織物の孔雀文様

 

最後は地下1階第二舞台入口の天井です。

格天井に織物が貼られています。

資料を調べてみると「名物利休緞子(紺)」と記されてあります。

茶道具の棗(なつめ)の袋裂に使用されている有名な梅の文様のようです。

舞台の鏡板に梅が描かれているから舞台入口の天井に梅の文様を選んだのでしょうか?設計者の意図はわかりませんが想像力がかきたてられます。

織物が格子を境に互い違いに向きを変えて貼られているため、地下ではありますが、照明器具の光の具合で同じ文様の色が異なって見えます。派手さはありませんが、紺地の緞子の渋さが光っているなあ~と思います。

第二舞台入口の格天井

 

天井散歩はいかがでしたか?

横浜能楽堂にお越しの際には、ぜひお楽しみくださいませ。

ただし、素敵な天井に見とれすぎないよう、くれぐれもお足もとにはお気をつけくださいね。

 

はぜの木

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